企業が実際に受けているディープフェイク被害と、対策側の動きをまとめています。当社では国内外の関連報道を毎日収集しており、そのうち企業実務に関係するものを選んで反映しています。

一般消費者向けの被害(著名人の偽動画、SNS上の拡散など)ではなく、業務の中で判断を誤らせる形の被害に絞っています。

ここに挙げているのはすべて公開情報にもとづく他社・他機関の発表です。個別企業の被害を当社が調査・認定したものではありません。 発表元または一次資料を確認できたものはリンクを付けています。リンクのない項目は、報道は確認できているものの恒久的なURLを特定できていないものです。


1. 送金・経営層のなりすまし

いまも被害額が最も大きいのはこの類型です。

2024年に香港で発生した約37億円の事案では、財務担当者が当初はフィッシングを疑いながら、指定されたビデオ会議でCFOと複数の同僚の姿を確認したことで疑念を消され、送金に至っています。映像と音声が本人に見えることは、本人であることの証明になりません。

直近では、入口がメールからビジネスチャット・SNSへ移りつつあります。警察庁は2026年2月13日付で「法人を対象とした詐欺(ニセ社長詐欺)に注意!」として、SNSグループの作成や招待用QRコードの返信を指示され、振込権限を持つ担当者を含めるよう求められる手口を紹介しています。

→ 詳細: Teams・LINEに移ったCEO詐欺|手口と確認の型

関連する調査・動向

時期 内容 出典
2026年8月 カナダの成人1,000人を対象としたCapcoの調査で、78%が音声生体認証・顔認識へのディープフェイクの影響を懸念。一方で52%が金融機関からリスクに関する案内を受けていないと回答 Wealth Professional
2026年7月 Surfsharkの調査。2020年1月〜2026年6月に公表された事案の損失合計を37億ドルとし、うち47%(17.3億ドル)がSNS発偽の求職者スキームによる損失も1億ドル含まれる Surfshark Research
2026年8月 銀行業界で合成音声を用いた詐欺が増加しているとの指摘。2025年に音声詐欺が約30%増加したとされる 米銀行協会(aba.com)
2026年8月 Microsoft Teams が、オンライン会議でのディープフェイク詐欺に対する「懸念報告」機能を導入したと報じられた windowslatest.com

2. 採用・面接でのなりすまし

2026年に入って報道が急増している類型です。

時期 内容 出典
2026年8月 米国の背景調査会社 iprospectcheck が事業者1,500社を調査。4社に1社が、ディープフェイクまたは代理応募が疑われる候補者を面接済みと回答 EIN Presswire
2026年7月 Surfsharkの集計では、偽の求職者スキームによる損失が1億ドル計上されている Surfshark Research
2026年8月 人事プラットフォームのDeelが、AIセキュリティ企業Clarityを買収。採用詐欺への対抗を目的として説明されている ffnews.com

リモート面接が定着した業務で、本人確認のプロセス自体が攻撃対象になっているという構図です。

→ 詳細: 採用・面接でのAIなりすまし対策


3. 本人確認(eKYC・生体認証)の突破

時期 内容 出典
2026年8月 Reality Defenderのレッドチームが、Googleの生体認証によるアカウント保護におけるディープフェイクの脆弱性を指摘 biometricupdate.com
2026年7月 本人確認事業者のAU10TIXとReality Defenderが提携し、本人確認詐欺の検出強化を発表 PR Newswire
2026年7月 Googleがアカウント復旧用のセルフィー動画検証機能を展開。ディープフェイクとプライバシー双方の懸念が指摘された biometricupdate.com

→ 詳細: eKYCのディープフェイク対策【金融機関向け】


4. 保険・損害調査での取り扱い

時期 内容 出典
2026年7月22日 Zurich Insurance Group 傘下の BOXX Insurance が、法人向け「Cyberboxx Business」にディープフェイク・AI起因事象を明示的にカバーする特約を追加 PR Newswire

注目すべきは、サイバー保険市場が2026年に入って二分している点です。 同発表では、2026年1月以降、一部の保険会社は逆にAI生成ディープフェイクによる詐欺を標準のソーシャルエンジニアリング補償から明示的に除外しはじめたとされています。BOXXはその反対側に立ち、明示的に引き受ける方針を打ち出した形です。

自社のサイバー保険がどちら側かは、確認しておく価値があります。

→ 詳細: 保険金請求におけるディープフェイク対策


5. 攻撃の産業化と検知側の動き

時期 内容 出典
2026年7月 IBMのデータ侵害コスト調査。悪意ある侵害の4分の1がAIを用いたもの(前年比56%増)で、平均コストは600万ドル。全体平均499万ドルを約100万ドル上回る。内訳は主にディープフェイクによるなりすましとAI活用マルウェアとされる IBM Newsroom
2026年7月 Sophos の2026年AIセキュリティレポートが、攻撃者によるAIの実用化で攻撃タイムラインが短縮していると指摘 Sophos
2026年8月 トレンドマイクロの2026年上半期レポートで、偽サイトにビデオ通話機能を追加し、合成した顔で「取り調べ」を演出する手口が確認された trendmicro.com
2026年7月 国連の報告書が、ディープフェイクを組織犯罪の「産業技術スタック」の一部と位置づけたと報じられた biometricupdate.com

「珍しい事故」から「継続的に投資される攻撃手段」へ位置づけが変わりつつある、というのが一連の報道から読める共通点です。


自社で確認するときに

被害の形はさまざまですが、業務プロセス側で止められる部分と、メディアの真正性を検証しないと判断できない部分は分けて考えられます。

前者は運用ルールの整備で対応できます(別経路での確認、多段階承認、止まってよい条件の明示)。後者について、G1 Technologyが国内で提供するspellbreaker(by ProbeTruth)は、音声・動画・画像がAIによって生成・改ざんされていないかを検証し、判定の根拠を説明可能AI(xAI)のレポートで提示します。出力は較正済みの確率であり、真偽を自動的に確定するものではありません。有資格の担当者による解釈を前提とした設計です。


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